「いのち豊かな綾をめざして」

 日本最大級の照葉樹林を有する綾町は、半世紀にわたって森を守り、自然と共生する地域づくりを進めてきました。全国に先駆けて推進した有機農業や手づくり工芸の里づくり、花いっぱい運動、綾の照葉樹林プロジェクトなど官民あげての取り組みは世界的に高い評価を受け、2012年、ユネスコエコパークに登録されました。これは先人たちの過去の取り組みが評価されたというだけでなく、未来に引き継ぐという想いを世界に向けて宣言したことを意味します。

ユネスコエコパークとは

ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、人間と自然の共生を目指すため、1971年に「人間と生物圏(MAB)計画」を発足させました。それを実現するためにモデルとして登録された地域のことを「生物圏保存地域(Biosphere Reserve:BR)」と言い1976年より始まりました。日本では2010年に愛称を「ユネスコエコパーク」とさだめ、国民にも親しみやすい名称となりました。多様な生きものが暮らす自然を厳正に保護するだけでなく、そのまわりで生活する人々の持続可能な発展を目指しています。

綾ユネスコエコパークの仕組み

人と自然の調和と共生を目指すユネスコエコパークには、3つの機能とそれを果たす3つの地域が設定されています。

■ 3つの機能

照葉樹林が育む豊かな自然環境と多様な生物の保護・保全

科学的な調査や研究、教育、研修の場の提供、人材育成

国内外のモデルとなる自然環境と調和した持続可能な地域社会の発展

■ 3つの地域

世界の財産として高く評価される自然生態系で、法律や制度に基づいて厳重に守られた原生的な地域。綾では森林生態系保護地域として保護されています。(682ha)

核心地域を保護する役割を持つと共に自然に負担がかからない範囲で環境教育や調査研究活動に利用できる地域。小林市・西都市・国富町・西米良村の一部が含まれています。(8,982ha)

人が自然と共生しながら持続的な暮らしを営む地域で、様々な社会活動や企業活動ができます。世界遺産にはないユネスコエコパーク独特の区域。(4,916ha)

綾ユネスコ エコパークの特徴

照葉樹林の保護・復元計画と自然生態系農業を柱とする地域づくりの連携

①東アジアの照葉樹林帯の北限付近にあたり、多くの日本固有種がある。
②日本の照葉樹自然林が最大規模で残されている。
③標高が高い地域にブナの自然林がある。
④平成17年(2005年)から「綾川流域照葉樹林帯保護・復元計画(綾の照葉樹林プロジェクト:綾プロ)」に取り組み、照葉樹林の保護・復元を目指している。
※綾プロエリアには、小林市・西都市・国富町・西米良村の一部が含まれます。

 

「綾町の自然を守る条例」、「綾町自然生態系農業推進に関する条例」、 「綾町照葉の里景観条例」など、約半世紀にわたる有機農業等との連携を通じて、自然と人間の共生に配慮した地域振興策を実施している。

綾ユネスコエコパークの自然と人の営み

■ 豊かな自然を支える綾川流域の照葉樹林

 照葉樹林とは冬でも落葉しない広葉樹で、葉の表面のクチクラ層(角質の層)が発達した光沢の強い深緑色の葉を持っています。日本ではシイ類、カシ類等がこれにあたり、アジア大陸東岸の西南日本、中国南部、台湾、ヒマラヤ、東南アジアの山地など、主に降雨量の多い亜熱帯から暖温帯に分布している常緑広葉樹林です。
 現在の潜在植生から推定すると日本の総面積の約50%が照葉樹林帯と考えられますが、多くは農地や人工林などに置きかえられていて、現存する照葉樹自然林は日本の総面積の約1.6%に過ぎません。その中で綾の照葉樹自然林は最も広いまとまった面積(約2,500ha)を持っています。
 綾地域の照葉樹林は東アジアの北限付近にあたり、多くの日本固有の生きものがいます。標高1,200m以上のエリアには、氷河期の名残としての夏緑広葉樹の自然林も残されており、西南日本の森林自然の縮図を見ることができます。

 

■ 照葉樹林文化

 照葉樹林が成立する東アジア地域には、味噌や醤油、納豆をはじめとした食文化の他、山の神信仰、焼畑耕作、うるし、養蚕(絹)、陶芸の釉薬(うわぐすり)や藍染めに用いる灰汁などの生活習慣等に共通する文化が見られます。照葉樹林文化は農耕と食文化にとどまらない、日本文化の深層をなすものとして提唱されています。

 

■ 綾の森・川・里と人の営み

 綾の奥山の照葉樹林は、シイ・カシ・タブなどの常緑広葉樹によって構成されており、いつも薄暗い環境で、地形はとても急峻です。やや乾燥気味の尾根部や斜面、とても湿潤な谷部、湿度の高い空気中や土壌など、綾の森には多様な生息環境があり、豊かな生きものがみられます。
 このように豊かな森は豊かな水をつくります。綾町を囲むように綾北川と綾南川が流れており、照葉樹の森から生まれた水は町自慢の農産物や酒、焼酎を生み出す源であり、「綾太郎」とよばれた献上鮎も育みました。 2つの河川に挟まれた中に広がる綾町の農地は、決して肥沃とは言えない沖積地や火山灰土壌が堆積した土地でした。昭和40年以降から力を入れてきた農業基盤整備による有機物投入による土づくりが実り、全国に先駆けて有機農産物のブランド化を推進してきました。
 また綾町では古くから豊かな森林資源を活かした木工品や碁盤、木刀などの工芸品が生産されていました。「手づくりの里・綾町」で育まれ守り継がれてきた伝統工芸(木工品・絹織物・陶器・ガラス工芸・竹細工など)の文化を国際的に広め、後世につないでいこうと取り組んでいます。
 これらの人と自然の営みは、住みよい地域づくりに取り組む「自治公民館活動」によって支えられています。22地区の連携した活動は、地域環境の保全と地域の振興、住民福祉の向上にとって重要な役割を担っています。
 雄大な自然と、自然の恵みに感謝しながら生きる人々が織りなす美しいまちを、見て触れて全身で感じてください。

綾町の歴史(共生と循環の営み)